僕がベンチャーで採用担当をしていたころ、業務のインプットで実際に役立った本を7冊に絞って紹介します(この記事は随時更新しています)。
「採用 本」で探している方の知りたいことは、だいたい3つに分かれます。初めて採用を任された方は全体像、面接を担当する方は見極めの軸、新卒採用や制度づくりまで見る方は組織の設計。ここで挙げるのは、採用を経営や組織づくりの中でどう位置づけるかを考えるための7冊です。手順書ではありません。面接の質問例や年間スケジュールのテンプレートがすぐ欲しい方は、実務特化の本を別に用意してください。
採用の本は、いま任されている範囲から選ぶ
採用の本は守備範囲が広いです。面接テクニックを扱う本と、評価制度や組織設計を扱う本は、同じ「採用の本」の棚に並んでいてもまるで別物で、僕は最初にここで遠回りしました。自分がどこまで任されているかを決めてから選ぶと外しにくくなります。
困っていることと本の対応は次のとおりです。番号は読む順番で、★は採用担当として得られるものの大きさから僕がつけたおすすめ度なので、上から順に優れているという意味の順位ではありません。
| いま困っていること |
読む本 |
おすすめ度 |
| 採用を任されたが、何から手をつけるか分からない |
1.ウォー・フォー・タレント |
★★★★★ |
| 面接で何を見て合否を決めるかが決まっていない |
2.採用基準 |
★★★★・ |
| 採用施策を感覚で回していて、良し悪しを検証できていない |
3.ワーク・ルールズ! |
★★★★★ |
| 入社後の定着や早期離職が気になる |
4.ALLIANCE |
★★★★・ |
| 採用だけでなく人事制度や評価まで任された |
5.戦略人事のビジョン |
★★★★・ |
| 事業計画と人材の話がつながっていない |
6.「変革型人事」入門 |
★★★★★ |
| 組織を変えたいのに、決めたことが現場で動かない |
7.なぜ人と組織は変われないのか |
★★★・・ |
初めて採用を任された方の読む順番
初めて採用を担当するなら、まず『ウォー・フォー・タレント』で採用の位置づけをつかみ、次に『採用基準』で人を見る軸を持つ流れが早いです。この2冊で、募集人数を埋める作業と、事業に必要な人を採る仕事がまったく別物だと分かります。制度や組織づくりまで任されている方は、そのあとで『戦略人事のビジョン』と『「変革型人事」入門』へ進んでください。
最初の1カ月で7冊を読み切る必要はありません。急がなくて大丈夫です。担当範囲が広がったタイミングで足していく方が、読んだ内容も頭に残ります。順番に迷ったら、いま手元で止まっている作業から逆算してください。求人票が書けないのか、面接で誰を通すか決められないのか、内定を出しても辞退が続くのか。詰まっている場所が違えば、開くべき本も変わります。
面接官として見極めの軸を持ちたい方
質問例を集めた本と、見極めの軸をつくる本は分けて考えてください。質問例は明日の面接に効きます。ただ、自社が何を評価するのか決まっていなければ、返ってきた答えの良し悪しは判断できません。7冊の中でその軸をつくる側にあたるのが『採用基準』です。
地頭のよさや話しやすさの印象で通してしまう面接官は、評価項目を書き出す前に一度読んでおくと、自分が何を見ているのかを言葉にできます。あわせて『ワーク・ルールズ!』を開くと、面接の回数や評価者の人数といった運用の決めごとを、印象ではなくデータで確かめる進め方が分かります。質問の型そのものは別で用意してください。面接官トレーニング用の実務書の方が早いです。
もうひとつ、候補者の側が何を読んで面接に来るのかを知っておくと、質問の設計が変わります。転職者向けにまとめた面接対策におすすめの本を眺めると、受ける側がどこを準備してくるのかが見えるので、用意された答えの外側を聞けます。
新卒採用におすすめの本を探している方へ
ここは正直に書きます。母集団形成、説明会の設計、内定者フォローといった新卒採用の実務は、7冊ではカバーしきれません。年間スケジュールや求人票の書き方が今すぐ必要なら、手順を並べたマニュアル本を先に買ってください。
それでも、新卒採用で7冊が効く場面はあります。僕がこの7冊を読み返すのは、施策を回したのに結果がふるわなかったときで、応募が集まらない原因が媒体選びよりも「誰を採るのか」の定義にあると気づいたのも、たいてい考え方の側の本を開いたあとでした。入社後の定着や早期離職が気になるなら『ALLIANCE』、内定者や新入社員の行動が変わらないと感じるなら『なぜ人と組織は変われないのか』が近いところにいます。
「採用の教科書」にあたる一冊を探している方へ
「採用の教科書」で探している方が欲しいのは、たぶん採用の全体像が一冊で見渡せる本だと思います。7冊の中で入口に近いのは『ウォー・フォー・タレント』です。採用を経営の課題として置き直す本なので、ここから始めると個別の施策の位置づけが決まります。
ただし、教科書と呼べるほど手順が載っているわけではありません。採用・育成・評価・配置をひとつながりで扱うという意味なら『「変革型人事」入門』の方が教科書に近く、目次を見るだけでも人事の守備範囲が一望できます。一冊で全体をつかみたいなら、この2冊のどちらから入るかで決めてください。
中小企業・ベンチャーで採用を回している方へ
採用の本は大企業やGoogleの事例が多く、あなたの会社にそのまま持ち込めないと感じることは多いはずです。僕もベンチャーで人事を兼任していたころ、専任チームも予算もない前提に読み替える作業をずっとやっていました。
読み替えの入口は2つあります。ひとつは、仕組みではなく検証のやり方だけを真似すること。『ワーク・ルールズ!』の面接回数や評価者の人数の話は、規模が違っても「その決めごとに根拠があるか」という問いだけ取り出せます。もうひとつは、制度を作る前に何を伝えたいのかを決めること。『戦略人事のビジョン』は、むしろ人数が少ない会社ほど効きます。制度で縛れない分、言葉で伝えるしかないからです。
人事・組織・採用でおすすめの本7選
リクルートやSMSでの採用、ベンチャーでの組織づくりで実際に役立った7冊です。並びは読む順番。出版社・刊行年・ページ数は、各出版社の公式ページで確認した数字を載せています。
1.ウォー・フォー・タレント
エド・マイケルズ,ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ,ベス・アクセルロッド 翔泳社 2002-05-18
おすすめ度:★★★★★
僕がリクルートで採用担当を任されたとき、先輩から最初にすすめられた一冊です。採用を「人が足りないから募集する仕事」だと思っていた僕にとって、事業を伸ばすための競争として捉え直すきっかけになりました。
マッキンゼーが行った大規模調査をもとに、優秀な人材をどう確保し、どう活躍してもらうかを事例とともに整理した本です。翔泳社から出たのが2002年で280ページ。登場する企業の事例はさすがに古いのですが、「採用は経営者の仕事だ」という前提は今も通ります。
面接テクニックを探している方には向きません。ここは出発点です。採用の予算や人数を経営会議で説明する立場になったとき、いちばん言葉を借りやすい一冊でもあります。

2.採用基準
おすすめ度:★★★★・
元マッキンゼーの採用マネジャーである伊賀泰代さんが、どんな人を採るべきかを書いた本です。面接の質問集ではありません。候補者の何を見て合否を決めるのか、その基準の方を扱っています。
タイトルは『採用基準』ですが、中身の軸にあるのはリーダーシップです。地頭のよさや論理的思考力だけで候補者を評価している方には、自社の評価項目を見直すきっかけになります。ダイヤモンド社から2012年に出た248ページの本で、面接シーズンの移動中でも読み切れる分量です。
面接官を任されたら、質問リストを作る前にこちらを先に読んだ方がいい。読んだあとで自社の評価シートを開くと、並んでいる項目がどれも「感じがいい」の言い換えだった、ということに気づきます。

3.ワーク・ルールズ!
ラズロ・ボック 東洋経済新報社 2015-07-31
おすすめ度:★★★★★
Googleの人事トップを務めたラズロ・ボックが、採用、評価、育成、組織づくりについて書いた本です。成功例と並べて、うまくいかなかった施策と検証の過程まで載っています。そこが強い。
東洋経済新報社から2015年に出た560ページ。厚いです。大企業の事例なのでそのまま自社に持ち込む本ではありませんが、採用や評価を感覚で進めず、仮説を立てて数字で確かめる進め方は、ベンチャーや中小企業でも真似できます。
僕が学んだのは施策そのものより、面接の回数や評価者の人数といった決めごとの根拠を検証するやり方の方でした。いま回している選考フローのうち、なぜその工程があるのか説明できないものがひとつでもあるなら、そこから読み始めてください。

4.ALLIANCE
リード・ホフマン;ベン・カスノーカ;クリス・イェ ダイヤモンド社 2015-07-10
おすすめ度:★★★★・
LinkedInの創業者リード・ホフマンらによる本で、会社と個人が終身雇用を前提にせず、期間を区切った信頼関係として働き方を設計する考え方が書かれています。監訳は篠田真貴子さん。ダイヤモンド社から2015年に出た224ページです。
採用担当にとっては、入社してもらうところで終わらせず、入社後の関係まで含めて設計する材料になります。退職を推奨する本ではありません。社員のキャリアと会社の事業をどう接続するかという話なので、採用広報、リファラル採用、退職者とのつながりづくりに関心がある方にも合います。
リクルートで働いた経験と重なる部分が多く、個人的にも納得できる一冊でした。入社1年目で辞める人が続いているなら、選考の見極めより先に、入社後の設計の側を疑ってみてください。人事の方はもちろん、経営者や転職を考えている方が読んでも学べます。

5.戦略人事のビジョン
八木 洋介,金井 壽宏 光文社 2012-05-17
おすすめ度:★★★★・
ベンチャーで人事を兼任すると決まったときに買った本です。採用だけを見ていると、どうしても応募者対応や面接の進め方に目が向きますが、この本は人事の役割そのものを一段引いた位置から捉え直させます。
制度を作る前に、どんな組織をつくりたいのか、それを社員にどう伝えるのかを考える内容です。すぐ使える施策が並んでいるハウツー本を期待して開くと肩透かしを食らいます。光文社新書で240ページ。通勤の往復2回ほどで読み切れます。
共著者は日本GEでHRリーダーを務めた八木洋介さんと、経営学者の金井壽宏さん。2012年の本ですが、扱っているのが制度の中身ではなく人事の立ち位置なので、内容が古びにくい。採用担当というより、人事企画や組織づくりまで関わる方に合う一冊です。

6.「変革型人事」入門
グロービス経営大学院 労務行政 2015-03-19
おすすめ度:★★★★★
グロービス経営大学院がまとめた『「変革型人事」入門 これからのHRに求められる発想の転換』です。人や組織の問題を、経営の実践として扱います。
採用、育成、評価、配置をひとつながりで捉え、事業と人材をどうつなぐかを整理できます。労務行政から2015年に出た286ページの本で、採用の話だけを求めて開くと、グローバル化やダイバーシティまで扱う守備範囲の広さに面食らうかもしれません。
効くのは、営業や事業部門から人事に異動した方、経営に近い立場で組織を任された方です。採用を「人を集める仕事」で終わらせたくない方に向いています。目次を先に眺めて、自分がまだ触っていない領域を確かめる使い方もできます。

7.なぜ人と組織は変われないのか
ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー 英治出版 2013-10-24
おすすめ度:★★★・・
組織開発やマネジメントまで踏み込みたい方向け。採用のノウハウ本ではありません。採用した人が入社後に変わる、組織が変わるとはどういうことかを扱っています。
英治出版から2013年に出た440ページの本で、採用担当になった初日に読むには重いです。★を3つにしているのはそのためで、中身が薄いからではありません。
決めたことが現場で動かないとき、その理由を本人のやる気に求めず、変化を止めている思い込みの側から解きほぐしていく構成になっています。時間を取って読むのに向いているのは、評価制度や育成、組織変革まで担当している方です。

採用の本についてよくある質問
採用担当になったばかりなら、どれから読めばいいですか?
『ウォー・フォー・タレント』からです。採用が事業の中でどこに位置するのかを先に押さえておくと、そのあとに読む本の置き場所が決まります。次が『採用基準』で、この2冊を読んだうえで、いま任されている範囲に合わせて足していってください。全部を先に揃えるより、いま詰まっている一冊を最後まで読んだ方がいいです。
「採用しちゃいけないNG人材」は本で見分けられますか?
この7冊に、避けるべき人物像のリストは載っていません。僕自身、そういう一覧はあまり信じていません。同じ経歴の人が、会社が変わると評価まで変わる場面を何度も見てきました。
本から取れるのは、誰を落とすかではなく、自社が何を評価するのかを言葉にする手順の方だと思っています。『採用基準』は評価軸の決め方を、『ワーク・ルールズ!』はその軸が本当に機能しているかを後から確かめるやり方を扱っています。落とす基準は、この2つを決めたあとに自然と決まります。
採用以外のビジネス書も読みたいときは?
人材そのものの話を続けて読みたい方は、僕が書いた『WORK 価値ある人材こそ生き残る』を無料公開している記事もどうぞ。どんな人が組織の中で価値を出すのかという、採用基準を考えるときの材料になる話を書いています。
ジャンルを問わず読むものを探しているなら会社員におすすめのビジネス書にまとめてあります。採用や人事から少し離れた棚も見ておくと、事業側の話をする相手の言葉が分かるようになります。
採用の本は、いま自分が詰まっていることから逆算して選んでください。任されたばかりなら『ウォー・フォー・タレント』と『採用基準』、制度や組織づくりまで見るなら『戦略人事のビジョン』と『「変革型人事」入門』です。まずは1冊。
面接の質問例、新卒採用の年間スケジュール、求人票の書き方といった手順そのものは実務特化の本の方が早く見つかるので、ここで紹介した7冊は、その手順をどう組み立てるかを決めたい方に向いています。採用や組織以外のビジネス書も探している方は、年代別におすすめのビジネス書をまとめた記事もあわせてどうぞ。参考になれば幸いです。
執筆者・監修者のmotoについて

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起業家・著述家(Wikipedia)。実名は戸塚俊介。広告・人材・IT業界など8社へ転職。副業でmoto株式会社を起業し、上場企業へM&A。現在はHIRED株式会社(有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-313037)代表取締役。著書:『転職と副業のかけ算』(扶桑社)、『WORK』(日経BP)